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当主の随想 Ⅲー3 [吉村家住宅あれこれ]


事実、この家が戦前国宝に指定されたときは、はじめ奥座敷

のみを美術工芸品として、部分的に指定する考えだったが、

当時民家の再評価の機運があり、環境も含めた「民家」として

初めての指定となったのである。


欄間の透かし彫りもクギかくしも、デザインがひとつひとつ

ちがう。

奥庭には深々とハゼの落ち葉が散り敷いて、散り残った紅葉が

深紅である。立方体の手水鉢も贅肉がなくていい。


わたしはすっかりいい気分になったが、この家をお守する吉村

さんは大変だろう。

「いやー。この家にうまれたときからきめられたことで、選択

自由はなかったんですし、といっても宿命というはどの暗い

感じも持ってはおりません。

ただ、私生活と古い民家の維持とはきっぱり分けていこうと

思ってます。私生活と別に保存会をつくって、見学料などは、

そちらに入れて維持費や補修費に積み立てております。

でもわたしがこの家の保存に本腰を入れたのは三十台の半ば

過ぎでした・・」