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当主の聞き書き(13) [当主の聞き書き]

(解体修理の頃)

 

質)飛びますが、昭和26年ころに解体修理が始りますね。

 

答)昭和25年に文化財保護法が出来、重要文化財に指定替えになったが、

  そのころ解体復元の話が出てきた。

 

修理責任者の浅野清先生とこの部屋で話をしたが、その話に若い私は感動した。まず修理にあたってどんなことを考えて修理にあたるかというお話である。「当初この家を建てた大工には、一貫したデザイン思想があったはずだ。

 

ところが、人が住んでいくうちにいろいろな事情で手直しされてきて、オリジナルデザインが壊されてきた。住むからには当たり前のことだったが、

今回の解体時を機会に出来るだけオリジナルデザインに戻したい。立派な建築に戻るはずだ。

もう一つは「素材の問題である。柱とか梁とかの素材はいつか必ず滅びるものだが、当初の一貫した様式、考え方をしっかり持っておれば復元はできる。」 素材の保存で無くて様式の保存を大切にしたいというお話だった。

 

「復元」か「現状復帰」かに迷っていた20代の私はこの話の内容に

感動して、一も二もなく「復元」に同意した。

 

(後から考えると、責任者間では、方向は復元に話は決まっていたように思える。話し合いは、単に住んでる家族に納得させるためだったかもと思う)

 

ところが、修理が終わってみれば、愕然とした。もう 住めない家になっていた。居間の形が違う、土間が大きく変わっている、水道も使えないような形になってしまっている。

やむなく我々は別家屋に住むことになった。

(続く)