当主の随想 Ⅲー1 [吉村家住宅あれこれ]
作家足立巻一氏(*1)と当主の対談から、吉村家の
主婦のことに話が弾んだのを記録されています。
(関西電力発行 「ひらけゆく電気」
1972年12月号 より)
吉村邸の主婦たち
足立巻一
羽曳野市島泉の吉村邸は、重要文化財の民家としてあまり
にも有名だし、また、日曜、祝日には公開されている(*2)けれ
ど、大阪近郊で ここほど気分の静まるところもすくないという
ことは、存外に知られていないのだはないか?
こんどたずねた初冬の日曜日は、ことに天気がよくて、長い
白壁の塀の上には ハゼ紅葉が燃えていた。
主屋のカヤぶきの大屋根は急勾配をなして正午の日光をたっ
ぷり吸い込んでいたし、壁や障子は真っ白く陽ざしを照り返し、
木目のの浮いた太い格子はくっきりした影を描いており、
それらの形、色がそれぞれに光線を受けてやわらかく、しかも
きびしく調和している。
主屋は元和元年(1615年)の大坂夏の陣の兵火で焼けた
あとすぐに建てられたといわれるので、三百五十年ほどの歴史
を持つことになる。
もっとも、そののちいろいろ改造、増築されたのを、昭和二十
六年から三年間にわたる文化財保護修理で、建造当時の原型に
復元されたものだ。
その縁側で日なたぼっこをしながら、吉村堯さんと話し込んだ。
(続く)
(*1)足立巻一氏:1913~1985
大阪芸大教授 小説家
作品 :「親友記」「やちまた」「日が暮れて
から道が始まる」 「足立巻一詩集」
など多数
(*2)1972年当時は 日、祝日公開だったが、今は年2~3回
公開 (特別見学希望にはご相談に応じています)
2023-02-15 21:49