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当主の随想 Ⅲー2 [吉村家住宅あれこれ]


縁側の前は白い石を敷いた広い庭になり、前は門長屋で白壁と

障子とがことに真白だ。映画「沈黙」の奉行所の場面はここで

撮影された。

最寄りの近鉄恵我ノ荘駅で降りても、吉村邸は集落の中にかく

れており、道は細くまがりくねって、いささかわかりにくい。

それをいうと、吉村さんは「標識を出してやろう行ってくださ

る方はいろいろあるんですが、おことわりしてるんです。

観光バスできていただくところではありませんし・・ そのか

り何時間でも、一日じゅうでもくつろいでいただくところだ

うんです。 古い民家というのは・・」


大賛成だ。京都や奈良の名所のように、観光バスで繰り出して、

彫刻やら建築の部分やら庭やらを見て、さっとかえってゆくと

いうようなところではない。集落のまがりくねった細い道を

たずねながら、おとずれるべきところであろう。


そして、専門の学者はべつとして、なにひとつ手を抜くことの

なかった先人の生活の造形に全体としてふれることだと思う。

そこにはもう現代建築には求めることのできない歴史観が浄化

されて残っている。そのなかでばらぶら遊ぶのがよろしかろう。


                    (つづく)