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“忘れ残りの記”または古家あるじの“譫言(うわごと)” 2 [古家あるじの“譫言(うわごと)”]

Ⅰ 「民家」の指定について雑感

 家族の生活の場として生きている古い建物がそのまま文化財に指定され、やがて修理されて、まるで実物大模型のように保存される、それも国有化でなく個人所有のままで、 という経過を辿る国指定文化財民家の置かれている現実は、まことに非情な過程を辿らされているとも言えようし、また、いずれは消え去るべき運命にあった古民家を文化遺産として保護保存しているのは実に見事な成果である、と見ることもできるだろう。

 400年近くの歳月を生き永らえてきた主屋は、もはやその生涯を閉じようとする寸前民家最初の指定を受け、同じく最初の解体復元修理を体験し、住居ではなくなったが 江戸時代初期豪農の代表的遺構として今日に至っている。その屋根の下で生まれた歴代のあるじたちの最後尾を承った者としては様々な感懐が去来する、と言いたいところでもある。